株式投資型クラウドファンディングとは2023年3月2日

【そもそもクラウドファンディングって?】

ここ数年、クラウドファンディングという言葉を耳にしない日がないほど世の中に定着しいてきているようだ。

クラウドファンディングとは「インターネットを使って不特定多数の人から少額ずつ資金を集めること」である。専門知識も必要なので多くの場合クラウドファンディング専業のサイト運営会社に掲載をお願いして、資金を出してもいいと思う人と資金を出して欲しい人をマッチングしてくれる。

実は私はこのクラウドファンディングの分野で日本一を自負している。何が日本一か。

1998年日本で初めて今日で言うところのクラウドファンディングが産声を上げた。当時はインターネットの普及が一巡し、中小零細企業自営業者でもeメールはビジネスに欠かせない時代に突入した頃である。中小企業であってもホームページがないと「怪しくない?」と噂されるようになった時代といえば実感いただけるだろうか。

今でこそ業界で有名な人だが、当時はまだ一介の公認会計士だった出縄良人と言う人物が、仲間の会計士や弁護士と研究して、行政の方針に合わないと言う理由で合法だが誰も手をつけていなかった、私設の株式市場とも言えるシステムの運用を始めた。VIMEX(ヴァイメックス)市場と名付けられたその仕組みは、不特定多数の人から会社の資本金を集める制度である。

この背景にインターネットの普及がある。eメールの普及で通信コストがゼロになったと言う感覚は当時の挑戦的な経営者にとっては衝撃だった。それまでの銀行借り入れ以外の資金調達は、コネを頼って投資家を探すだけ。そこには暗躍する仲介人と狡猾なハイリスク投資契約をクリアするという障壁があり、多くのベンチャー挑戦者がその巨大な壁の前に散り去っていた。そうした課題をクリアしたいという考えで登場したのがVIMEXだった。クラウドファンディングの登場である。

V I M E Xは大蔵省(現在の財務省+金融庁)の意向で私設市場から日本証券業協会が運営する半公的制度に改変され、グリーンシートと言う名称が与えられた。1999年であった。

さて、私が日本一を自負する理由は、このV I M E Xの時代から今日まで支援者として活動を継続しているのが出縄良人氏と私、佐藤公信だけだからだ。同氏は現在プラットフォーマーの社長として活躍している審査をする側。これは当時から変わっていない。私は純粋に支援するサイドで活動を続けてきた。と、言うわけで長さだけは間違いなく日本一だ。

長期にわたって活動してきたので件数9社 金額20.6億も日本一ではないかと推定しているが、このコラムを読んで「私の方が上」と言う支援者の方がいたら是非連絡してほしい。ご一緒にコラボをさせていただきたい。

 

【クラウドファンディングって5種類ある】

さて、話が脱線したがクラウドファンディングに話しを戻そう。

日本では1999年にグリーンシートでクラウドファンディングの歴史がはじまったが、ここでお気づきだろうか。なぜ大蔵省が管轄だったのか?あなたが良く知るクラウドファンディングは、物を売ったり寄付を募ったりと言うものだろう。

そもそもクラウドファンディングは資金調達の手法のひとつだ。資金調達は現在では大蔵省から分かれた金融庁が主幹なのだ。

ん?物売りや寄付集めが金融なのか?そんな疑問が湧くだろうか。ちょっとその辺も解説しておこう。

ひとことでクラウドファンディングと言っても、会計&法律上5つに分類するのが一般的だ。この5つが会計的に売上タイプと金融タイプの2つのタイプに分類できる。

 

・売上タイプ

・金融タイプ

 

売上タイプは文字通り売上だ。これが広く世の中に知られているクラウドファンディングと呼ばれるものだ。

「ちょっと待って、クラウドファンディングって資金調達の方法のはず、寄付なら貰いっぱなしだからいいけど、売上になるんじゃ資金調達じゃないじゃん」そう思ったあなたは会計センスがある。この売上タイプのクラウドファンディングの何が資金調達かというと、「時間差」である。

事業は一般的には仕入れてから売る。資金の順番だとお金を払って仕入れてから売れるとお金が入ってくる。先に払って後から入金なのでこの時間差を埋めるために資金調達が必要なのだが、売上タイプのクラウドファンディングは先にお金をもらってからその金で仕入れて後で商品を渡すのでこの間、資金が使えるのだ。この時間差を資金調達と呼んでいる。

これを利用して、コロナで疲弊した飲食店が食事券を販売して入金がされて後日お客様がその食事券を持ってきて食事を振る舞う。とか、発明品を発表して先に買っていただきその入金されたお金で材料を仕入れて製作して数ヶ月後に完成したものを納入する。といった例がある。

これがクラウドファンディングと言われるゆえんだ。つまりクラウド(群衆)からファンディング(資金調達)する。わけだ。知名度アップとかイベントで盛り上げるとか市場調査などにも活用できるが、それは応用であって本質ではない。応用することは悪いことではないが、昨今はこうした本質を理解しないで応用編での利用が横行しているので、本質を忘れるとこの制度自体の存在意義が問われることになるかもしれないと危惧している。

この売上タイプのクラウドファンディングには会計的に2つの型に分類される。「購買型」と「寄付型」だ。いずれも会計上は損益計算書に計上される。購買型は売上に。寄付型は営業外収益にそれぞれ計上される。従ってそのまま所得税の課税対象になる。

売上タイプに対して金融タイプとはどういったものか、金融タイプは文字通り金融だ。従って会計上は貸借対照表に計上される。

損益計算書、貸借対照表・・・う~んと唸った社長はすぐに勉強するか社長やめるかの選択をした方がいい。そのまま続けてヘタに黒字になったりしたらその先には不幸しかない。財務を理解しないで売上と利益だけ拡大して散っていった社長をたくさん見てきた。そうした社長を救えなかったのは慚愧に堪えない。

金融タイプは法律で3つの型に分けられる。「基金型」「融資型」「株式投資型」だ。先ほど述べたグリーンシートは今日では株式投資型クラウドファンディングに分類できる。

つまり整理するとこうなる

 

・売上タイプ—–「購買型」

      —「寄付型」

 

・金融タイプ—–「基金型」

      —「融資型」

      —「株式投資型」

 

金融タイプのそれぞれについて解説していこう。基金型クラウドファンディングは一つの投資目的を決めてその目的に賛同した投資家から運営者が基金として期限を決めて目的に沿ってお金を運用する。期限が来たら清算をしてお金を出した投資家に償還(返金)する仕組みだ。多くの場合、不動産の運用に使われるので不動産投資型と言われることもある。この場合の運用とは家賃収益や売却益を得ること。ただ法的には不動産投資に限られてはおらず、実際株式会社への投資に使われるケースもあるので不動産投資型と言うのは偏った言い方だ。期限があるので会社が基金型で資金調達をしてしまうと返済不能となる。その際にはまた別の資金調達をしなければない。調達ができなければ破綻するという恐ろしい手法だ。

融資型クラウドファンディングは運営者が融資先を審査し、その融資をするための資金を投資家から募る仕組みだ。別名ソーシャルレンディングとも呼ばれていて、調達した資金は返済することが前提だ。多くの場合募集する際には、利回りが決定していて投資する人がリターンとして受け取る仕組み。融資型クラウドファンディングは、投資する側にとっては大きな元手がなくても運用がしやすく社債よりも高めのリターンとなることが多いものの、借り手企業が返済できない場合には、投資した元本が戻ってこないと言うリスクがある。いざとなったら売却して返済ができる土地を担保にするなどの安心感がないと実際には資金調達は難しい。

株式投資型クラウドファンディングは資本主義の基本中の基本、その名の通り株式を発行して買ってもらうクラウドファンディングだ。つまり株主を募集するクラウドファンディングだ。これは1999年まで上場企業だけに許された特権だったのだ。逆にいうと上場企業以外は自由な資本主義が禁止された国だったのである。日本という国は。

2015年の法律改正でさらにどんな株式会社でも自由に資本金調達に挑戦が許されるようになった。それまで消極的だった管轄の金融庁も積極的に推進する意思を示し現在6社に金融一種免許を与えている。

売上タイプのプラットフォーマー(マッチングサイトの運営会社)は許認可なしで誰でもできるが、金融タイプには金融庁の実質的な許認可が必要なのだ。その中でも株式投資型クラウドファンディングのプラットフォーマーが持つ金融一種免許は特に厳しい条件が課せられておりその分信用度が高い。


C Fスタートアップス
・ユニコーン
eクラウドなど6社がある。

ここに挙げた3社とは懇意にさせていただいており、各社積極的に投資家とのマッチングを通して社会への貢献を果たしている。

 

【夢のような株式投資型クラウドファンディング】

このようにクラウドファンディングには5つの型ある。

この中で事業成長意欲のある社長にとって最も利用価値が高いのが株式投資型クラウドファンディングだ。不動産などの担保も不要、資本金なのでもちろん返済も不要、しかもまとまった資金をプラットフォーマーが集めてくれる。万が一の時でも安心安全な資金調達手法だ。解説していこう。

株式投資型クラウドファンディングを一言で言うとインターネットを使って不特定多数の株主を募集する制度だ。

エンジェル投資家という言葉を聞いたことがあるだろうか。エンジェルつまり天使だ。志の高い社長に対して応援の心を持って資金を提供する投資家のことだ。多くの場合増資に応じるという方法で投資する。社長から言えば新規に株を発行して買ってもらい株主になってもらうということだ。日本には3万人程度のエンジェル投資家がいると推計している。

このような投資家と志の高い社長をマッチングする仕事を四半世紀近くしてきたが、一貫してず~っと投資過多の状態だ。つまりお金を出したい人の方が挑戦する社長よりも多い状態だ。だから実際に募集するとあっという間に資金調達は完了する。金額が限定しているので抽選になった経験も一度や二度ではない。ただし、現在の株式投資型クラウドファンディングは先着順なので抽選はない。

さて、挑戦への手順だがまずはプラットフォーマーの審査に挑戦だ。挑戦は誰でもできる。審査に受かると調達額を決めて募集する。法律で年間の上限は1億円と決まっている。1年経てばまた追加で募集できる。実際の平均は3000万円程度とかなり高額だ。投資する側は150万円が上限と法律で決まっている実態は23万円。つまり1回で100150人の株主が現れるということだ。募集期間は1週間から3週間程度。集めてもらう手間や審査料など諸々含めてプラットフォーマーに支払うのは集まった額の20%程度だ。購買型も20%程度と同じだが集まるのは100300万円でしかも社長が自分で集めなければならないが、株式投資型なら集めてくれる手数料込みだ。しかも3000万円が平均だ。こうしてみると購買型は資金調達というよりも単なる売上アッププロモーションにしか見えない。

購買型のクラウドファンディングで資金調達に失敗したという話はよく聞く。そのことと投資過多ですぐに集まるという話の矛盾。これは本質的な事業の成功を目指すか目の前の資金調達を目指すかの違いによって起こる現象だ。詳しくお話しよう。

 

【資金が自動的に集まる理由】

一般的に知名度の高い方の購買型クラウドファンディングは要するに売上だ。掲載させすれば自動的に売れる仕組みがあればそんなありがたい話はないがあるはずもない。一方で3000万円が1週間で自動的に集まる株式投資型クラウドファンディングもある。この違いは何か?

一言で言えばビジネスの本質かどうか。である。

株式投資型クラウドファンディングはビジネスそのものに支援をお願いするクラウドファンディングだ。一方で購買型クラウドファンディングは商品提供だ。支援という要素もあるが資金提供者は基本的にはその商品が欲しいかどうかで判断する。株式投資型クラウドファンディングは事業=会社経営そのものに必要な資金を要請するので資金提供者は欲しいものはその「事業の成功」ということになる。これを事業の本質と表現したのだがお分かりいただけるだろうか。

資金提供者にはいろいろな考え方の人がいる。事業成功は株価の上昇であり売却益を狙うというマネーゲーマー的な投資家もいるし、自分の推しが成功することを喜ぶようなマニアックな投資家もいる。当然、マネーゲーマーを煽った方が資金調達の可能性は高いが後でトラブルが多いのもこうしたタイプだ。

いずれにしても自分のビジョンと情熱を経営理念としてしっかりと見せること。さらにそのビジョンをどうやって実現させるかという経営戦略をしっかりと見せることが資金調達の成否の分かれ目だ。前出のプラットフォーマーはその審査をする権限を金融庁から与えられている。間違えて欲しくないのは審査に通るにはどうしたらいいかを考えるのではく、事業が成功するために経営理念と経営戦略が必要なのだということだ。彼らは審査に通った会社に投資したのではない。成功しそうな会社に投資して支援したいのだ。

社長の多くは自分の成功を信じているが、ほとんどの人はそのことを表現できていない。表現とは見せること。見せるとは読ませること。つまり読める状態にすることが最低条件だ。口頭でどんなに素晴らしい情熱的なプレゼンテーションをしてもその瞬間に消えてしまう。そうした会社に投資するのは二流三流の投資家だ。トラブルの元だ。

当然ながら読めればいいというものではない。中身が重要だ。でもここからがよく考えてほしい。テクニックを持って理念と戦略の形式を整えると二流三流の投資家からの調達はしやすい。一流の投資家でさえその中身を見抜くのは難しい。

あなたは中身のある後世に誇れる一流の経営者を目指すか、とりあえず資金調達を実現する二流の経営者になるか。それは理念と戦略の中身次第だ。その中身を作るには紙面が足りないが、コツは古来から言われていることを利用するといい。

「無知の知」だ。

 「無知の知」とはソクラテスが言った言葉だ。「自分はまだ何もわかっていない。ということを知ることだ。」自信を持って100%考え抜いて経営理念を作り、たくさんの知恵を得て自信を持って経営戦略を完成させたら、それが50点の出来だと認識するといい。

これが経営能力向上でコツであり資金調達のコツ。知恵も情熱も無限に秘めているから、きっと厳しい審査に通る経営者になれる。誰でもなれる。なぜならそこまでやり切る経営者はごくわずかだから。ごくわずかなので、いつもお金を出したい人の方が挑戦する経営者よりも多くて、合格すればすぐに金が集まってしまうわけだ。現状の審査合格率2%と厳しい。

さて、100%の力を出し切ってからそれが50点だとしたらそこから先はどうしたら100点になるか?経営を学ぶか10年~20年試行錯誤するか。のいずれかだ。時間短縮と成功確率を高めるために前者を強くお勧めする。因みに正しく学んだ人の合格率は50%を超える。

さて、日本にようやく根付き始めたように見える資本主義だが、これは一過性のことなのかそれとも定着していくのかその背景に興味おありだろうか。

国はさまざまな政策を通して日本の中小企業経営者の軽能力の向上を促進させようとしているようだ。

 

【背景と日本の経済政策】

「直接金融」という言葉をご存知だろうか?会社が一般のマーケットから直接資金を調達する事を言う。一般的にはこれを株式の販売という形で実施し資本金という科目で会社内に取り入れる。よく、事業の元手という、あのもとでのことだ。これが資本主義の原理原則で投資自己責任と言って投資の責任は投資家が負うが投資した金額以上の責任は負わない有限責任という制度が資本主義だ。

話は硬くなったが、こうした有限責任のおかげで社長は、思い切って成功を信じて突き進むことができるわけだ。

これが資本主義のいいところ。のはずなのだが日本は実際にはそうなっていない。そうなっているのはかつて発展途上国といわれた東南アジアの各国ばかりだ。その結果日本の国力は大きく損なわれた。特に中小企業の経営能力はG D P対比で世界最低レベルと言われるまでに落ち込んでいる。30年前は世界1位だった国際競争力も2022年はまさかの34位まで転落した。まー。私から見ても「財務は税理士に任せているからよくわからない」という社長が会社を存続できているぬるい呑気な国だなぁと思える。

「このままではいけない」と思うのは何も経営コンサルタントだけではない。超一流大学を優秀な成績で卒業した日本の官僚の方々ならたとえ法学部出身だらけであったとしても気がついているはずだ。

ここ数年で銀行を取り巻く金融庁の態度が大きく変わった。

 

・金融庁の検査マニュアルの廃止=銀行経営の自由化

・金融庁から銀行への事業性評価の要請=過去主義を捨て未来主義への転換

・株式投資型クラウドファンディング=中小企業経営能力向上支援

・持株5%ルールの実質自由化=銀行によるMA解禁

・連帯保証の原則禁止=中小企業経営への喝

これらがこの5年で立て続けに起こっている。これが偶然起こるはずがない。日本の経済政策の大きな転換とみる。

 

金融庁の検査マニュアルは重箱の隅を突くような意地悪で容赦ない金融庁による銀行信金の経営統制だった。1990年のバブル崩壊に伴う金融危機を乗り切るための国家による金融統制だ。お隣の共産主義の国の話ではないつい5年前まで日本でも金融界では同じことがされていたのだ。この間に融資現場を知っていた当時バリバリの金融マンは既に65歳オーバー既に現役ではない。つまり日本の金融界は現場審査能力を持っている人間が一人もいなくなってしまったのだ。この状態でのマニュアルの廃止。「これまでの重箱の隅を突くような(中略)をやめ、」と金融庁のH Pに書いてあった。これは笑った。わかってやってたんかい。さて、突然ほっぽり出された各銀行の経営企画マンや経営者の腕が試される。古い体質の地銀や信金は淘汰が進むんだろうなぁ。今まで国家権力に守られてきたんだから少しは苦労をしろってちょっと意地悪な気持ちになってしまう。

さらに追い打ちをかけるように、直接金融の解禁だ。これまで「貸してやろうか」的な絶対的な優位な立場だった銀行。これは借りるという方法以外に選択肢がなかったからやってこれたが、株式投資型クラウドファンディングは返済不要でもし失敗しても融資のように取り立てに負われる心配がない。それどころか150人もの株主という名のアドバイザーが経営を支援してくれる制度が現れた。これで銀行さんが少しは危機感と競争意識を持ってくれるといいんだけど、、、と願ってしまう。

社長にとって直接金融は銀行と違って経営能力に磨きをかける制度でもある。日本の銀行は融資を断る際に自己防衛を優先して、断る理由を言わない。ましてや改善提案などしない。他国のように社会的使命感を持つ銀行は融資を断る際にもその理由を明確に告げるので社長としては改善点が明確になり自己研鑽の道筋が見える。全国各地でこれが行われたら30年経てば国力がひっくり返るのも当然だ。ひるがえって日本でも直接金融の場合、大手を除いて一流と言われる投資家は投資できない理由を明確にすることがその社長への敬意だと考える。投資されなくても挑戦するだけで経営能力が磨ける言われる所以だ。念のため繰り返す日本の大手ベンチャー投資機関、ベンチャーキャピタルはお世辞にも一流とは、、、要注意だ。

銀行の5%ルールをご存知ない社長は多いが、最近まで銀行は融資先企業の株式を5%以上持ってはいけないという行政指導があった。銀行による支配を禁止するためだったのだが、なんとこれが実質撤廃された。「地元経済に大きな影響がある場合に限り、5%ルールは撤廃する」という、大きな影響かどうかの判断は銀行に委ねられるとするとこれは「原則自由」ってこと。これって社長にとっては一大事だ。自分の会社があの銀行・信金の子会社になるってこと。そうなれば社長を任命するのはその銀行に委ねられる。なぜそんなことを金融庁は許したのか?

理由は二つあって、一つは中小零細銀行信用金庫の存続の為。これまで融資残高を正常な債権から延滞している不良債権まで5段階に分けて安全度を測っていたのだけど、バブル崩壊以降の景気の低迷とコロナ融資で結構甘あまな評価が許されていた。本当は焦げつきそうな融資であっても、少し危ないかもしれない程度の評価が許されていた。これが厳しく変わる。すると銀行の融資残高が焦げつきそうな比率が高いぞと国際的に見なされる(これB I S規制と言う)。そうすると信用不安になるので国としても何としても焦げつきそうな債権は回収したいわけだ。もし、あなたがコロナの特別融資やリスケとかして金利しか払ってない状態の会社の社長だったら、急に3ヶ月後から元本と金利の支払い再開できる?無理でしょ。銀行もそんなこと百も承知で返済を迫ってくるかもしれない。返す刀でこう言われたらどうする?「じゃあ、社長借金なしにしましょう。その代わり貴社の株ください」これ断れないでしょ。D E S(デス)という手法です。銀行はめでたく不良債権がなくなりました。これが理由の一つ目。

二つ目の理由。こうして銀行は従業員付き顧客付きの貴社を手に入れるわけだから、経営力のある人を連れてきて社長にして然るべきところに売却すればMA手数料が入ってくる。銀行からしたら災い転じて福となす。もちろん元オーナーの前社長は失業だ。

金融庁も飴と鞭の政策。社長にとって厳しい政策転換だけどその代わりとして「社長による連帯保証の原則禁止」が発表された。会社による借入れの責任を社長個人に負わせなくていいというもの。遅きに過ぎるとは思うけれどこれでようやく抜かれてしまった東南アジア各国を再度キャッチアップする条件が整った。

 

【これから社長に必要なこと】

私は長年社長をお客さんに資金調達の支援をしてきた。金額も20億円を超えるしクラウドファンディングに限って言えば日本一の自負がある。でも25年の経営支援と称するこの中で私は大きな過ちを20年にわたってし続けてきた。

それは、資金調達だ。

日本という国は幸にして挑戦者が少なく、資金が溢れている。だから形式を整えるテクニックと情熱を見せるテクニックがあれば比較的容易に資金調達できるのだ。これが補助金や助成金だともっとちょろい。でもこうしたお金は社長には不幸以外を招かない。お世話するコンサルタントには美味しい仕事だ。もちろん話題になりニュースに出るような成功者もいるがこれは例外的だからニュースになるのだ。

本質的な事業の成功を目指すか目の前の資金調達を目指すか。私は5年前までは目の前の資金調達を支援していた。戦略形式と情熱の見せ方を整えれば資金調達ができるのは私の実績が示すとおりだ。しかし、その後その多くの会社が倒産した。戦略も情熱も形式的で薄っぺらだったのだ。でもその時は社長もそのことに気がついていない。100%考え抜いた戦略であり100%以上を出し切った情熱だった。でも社長にとっては100%超でも世間的にはレベルが達していないことに社長も私も気づけなかった。

気付くこと、気づいて自分で作らない限り成功はしないことを知り、社長自身が気がついていない情熱の源泉や価値観を見つけてもらい経営理念を作成すること、経営の基本の型を習得して社長自身の思いが実現できる戦略を構築すること。これができれば、多くの社長が成功する、成功までしなくても最低でも不幸にはならずに再挑戦できる、そんな資金調達であれば結果として国力も上がるはず。そう信じている。

事実東南アジア各国はそうして国力を上げてきた。21世紀の初頭にして日本も資本主義が始まった。上位0.3%に過ぎない上場企業という例外企業だけが許されていた社長にとってリスクのない資金を活用した経営。夢を追うのにリスクはつきものだが、失敗した時に人生がダメになるとか、まして生死に関わるようではリスク過多でバランスが悪すぎる。そんな国にバイタリティは生まれない。

社長はバカだ。安定した収入と安定した地位を求めず、家族を不安にさせ心配させ迷惑をかけてそれでも、何かやり甲斐、生き甲斐や将来の夢を求めて社長をしている。そんな人が日本には400万人もいる。その99.7%が中小企業と言われ、大企業と差別を受けて扱われるけど、その99.7%の社長が日本経済をつくっている。だから学んでください。経営能力を身に付けなければ淘汰されるんです。経営能力を身につければ夢が叶う人生が待っているんです。きっかけは資金調達でいいから、そのために必要な、たった二つのこと折れない心が宿る経営理念と成長と確実な資金をもたらす経営戦略、この二つを記すことだ。

ここまで読みきった社長は必ず成功できる。がんばれあなた。がんばれ日本の社長。